朝生

ワイドショー的ニュースが多い今回の総選挙報道の中ではマトモな方.*1

共産党社会保障,その他財源について,伝統通り大企業課税を挙げているのと対象に,社民党は声を濁してる.あまつさえ,かつての党是「消費税反対」を明言する機会にもお茶を濁す.選挙後の民主党との連携を視野に入れてるのか?

民主党.出てきてるのが蓮舫氏(民主党参院議員)なので何ともいい難い.彼女は「政策通」?*2
これまでの竹中平蔵vs菅直人でもお茶が濁され,ビデオの前に生で見た今朝のウェークアップでも枝野氏が説明を逃げた感のある,一元化後の年金における二階建て部分*3については,また聞けずじまい.

  • 厚生年金(公務員共済)における使用者負担分は,正規雇用者の特権とするのか(実質,非一元化)
  • 使用者負担を無くし所得に応じて平等にするのか(企業大喜び,正規被用者号泣)
  • 非正規被用者*4について使用者負担にあたる部分を国が負担するのか(税金を使う,財源は?)

別の話として,法人税率の引き上げ(引き戻し)の話が出ていたが,これを行わず,その代わり,厚生年金・公務員共済の一元化,非正規被用者についても使用者負担を負わせるというのがいいバランスではないかと—自営業者,被扶養者については…ん〜,宿題)

  • 「経済ジャーナリスト」とやらの荻原氏は,冒頭の郵政民営化についての的外れな批判で,「経済(制度)」についての理解に疑問.
  • 小泉氏,同政権をナチス大政翼賛会に例えていた平野氏は,本質的には「手法批判」でなく,「政策批判」「人格批判」の為の手法批判という印象で,悪印象.
  • 金子氏のように人(小泉純一郎氏)の批判ばかりしてる人の言は信用できないが,勝谷氏のように人(田中康夫長野県知事小沢一郎氏)の称賛ばかりする人の言も同様に信用できない.(「言」は「評価」だけでなく「評価」の元となる「情報」も含む)
  • 宮崎・松原氏の言(「評価」への賛否は別として「情報」)は,そこそこ信用できる印象.ある人,ある団体(政党)について語る時は,嘘でもいいから,高評価している場合は批判を前置,低評価の場合は称賛を前置していただくと,少なくてもオレはコロっと騙される.
  • テレ朝の元プロデューサー(氏名不明)は,そこそこ信用できる印象(根拠なし.極端な言を発してなかったからかな)
  • 共産・社民,それから田中長野県知事のように,何でもかんでも「ヨーロッパ」ではという輩も信用できない(「所変われば品変わる」のは当然のこと,政治・経済・制度・法律・その他,欧州が優れている点もあれば米国が優れている点もあれば,途上国の方が優れている点もあれば,日本が優れている点もある)

1つ,2つ耳についた点.

小さな政府

社会党・福島党首の発言.

小さな政府を目指すなら,なんで辺野古に何千億円もかけて・・・(以下,司会・田原氏の「それは別!」の一言で遮られる)

「小さな政府」ってのは歳出を幾らにするかって話じゃなくて,使途を何にするかの話.基地(国防)は,正に「官」にしかできない事なので,「小さな政府」の本分.
福島氏は弁護士上がりで,政治は専門じゃないはずなので,仕方ない…のか?まあ,坊主憎けりゃ袈裟まで憎いということで,深い意図はなかったんだろう.

勝ち組政治

これも,福島氏が壊れたレコードのように繰り返していた単語.所謂「二極化」について否定したいわけではないが,小泉首相の「ワンフレーズ・ポリティクス」を声高に批判(中身がないと)しているのは,社民をはじめとする野党では?
誰が「勝ち組」で何が「勝ち組政治」で(内容),自らが政権を取れば—ありえないか,「多少なりとも影響力を持てれば」に変更—,誰をどのように「勝たせる」のか(対案)を言わなきゃ,まさに「ワンフレーズ・ポリティクス」.

死者の冒涜

もっと耳に付いた点.

死んだ人の話してるんだから聞け!

イラクで死亡されたジャーナリスト・橋田信介氏について語った際の,コラムニスト・勝谷氏の発言.これ以外にも1,2度,自分の言を聞かせる為に声を荒げていたので,前段の理由(死んだ人の話してるんだから)が氏にとっていかほど重要なのか分からないが,死者についての話を遮るよりも,死者を理由に自分の話を聞かせることの方が死者への冒涜にあたるのではないだろうか.

戦闘地域

さておき,たぶん今日の本題.まず,↑の前後の話(要約).

イラクで死亡した橋田氏はAIU保険に加入していたが,戦地であることを理由に保険金がおりなかった.遺族は保険金の支払いを求めて提訴.先日(23日),東京地裁で判決があり,保険金支払いの拒否を容認.
つまり,日本の司法も,イラク戦闘地域であると認めたのだ!

疑問点.

  • AIU保険は,イラク特措法テロ対策特措法(以下,単に「特措法」)の「戦闘地域」であることを理由に支払いを拒否したのだろうか?(AIU保険の約款で,独自の定義をしてたんじゃないの?)
  • 遺族はおそらく,イラク特措法を根拠に不払特約条件の非該当性を主張したのだろうが(でなければ論外),東京地裁は,「それはそれ」ってことにして,単に約款における不払特約の該当性を審査したのではないだろうか?

とりあえず,AIU保険の約款を検索.橋田氏が加入した保険の種類は分からないが,手軽に見つかった「海外旅行傷害保険普通保険約款」から引用.

第2章 保険金を支払わない場合
① 当会社は、次の各号に掲げる事由のいずれかによって生じた傷害に対しては、 保険金を支払いません。
(8) 戦争、 外国の武力行使、 革命、 政権奪取、 内乱、 武装反乱その他これらに類似の事変または暴動 (この約款においては、群衆または多数の者の集団の行動によって、全国または一部の地区において著しく平穏が害され、 治安維持上重大な事態と認められる状態をいいます。)

案の定,ありきたりな保険約款.


23日のニュースを幾つか見たところ・・・

柴田寛之裁判長は「契約上、保険金の支払いが免責される『武装反乱』が原因だった」と述べ、請求を棄却した。
判決によると、橋田さんは2003年9月、海外旅行傷害保険に加入し、04年5月、バグダッド南方を移動中に襲撃され、死亡した。保険の約款が免責理由に「武装反乱」を挙げているため、武装勢力による襲撃か、強盗目的の襲撃かが争点となったが、判決は、「武装勢力が行った無差別襲撃だった」と認定した。

昨年5月、イラクバグダッド近郊のマフムディヤで取材中に銃撃され、亡くなったジャーナリスト橋田信介さんの遺族が「海外旅行傷害保険金の支払いを理由なく拒まれた」として、AIU保険(東京)を相手に計750万円の支払いを求めた訴訟の判決が23日、東京地裁であった。柴田寛之裁判長は「銃撃は反米武装勢力によるもの」と判断し、保険金支払いが免責される「武装反乱」に該当するとして請求を棄却した。
訴えたのは橋田さんの妻・幸子さんと長男。AIU保険は昨年8月、「戦争や革命、武装反乱などで生じた傷害は免責される」との約款を根拠に支払いを拒絶した。
判決は(1)犯人集団は相当統率され、生き残ったイラク人運転手には最初の銃撃以上の危害は加えなかった(2)現場周辺では外国人へのテロが頻発していた、などと認定。反米武装勢力による「武装反乱」にあたると判断した。
遺族側は「軍隊などの指揮官にではなく民間人への銃撃で、『反乱』ではない」と主張したが、判決は「橋田さんらは米国製の車に乗り、事故直前は米兵と話していた。米軍に協力的と目される民間人を対象とした無差別攻撃で、政治上の支配者への反抗にあたる」と退けた。
判決後に記者会見した幸子さんは「銃撃犯が特定されていないのに反米武装勢力と判断し、免責したのは納得できない。フリー記者による危険な場所での取材をやりにくくする判決だ」と批判。保険金が出れば戦場を取材するフリー記者らを支援する基金を作る計画だったが、「できなくなって残念」と語った。控訴するかどうかは明らかにしなかった。

期せずして,「海外旅行傷害保険」であることも分かったが…さておき.
保険の約款が免責理由に「武装反乱」を挙げているため、武装勢力による襲撃か、強盗目的の襲撃かが争点となったってことは,特措法なんて,話題にも上がってない.(原告側の主張としては挙げられたのかもしれないが,「争点」とはされなかった)
というわけで,我が国の司法は特措法について,何らの判断を下してはいない.


追記.原記事は残ってないが—縮刷版の確認もしてないが,複数のサイトにログが残っているので信憑性は高いはず—,第一回弁論での遺族の主張.

今年五月、イラクで襲撃され死亡したフリージャーナリスト、橋田信介さん=当時(六一)=の妻、幸子さん(五一)と長男の大介さん(二二)が、信介さんの加入していた海外傷害普通保険の死亡保険金一千万円の支払いをAIU保険(アメリカ・ニューヨーク)が拒否したのは不当だとして、支払いを求める民事訴訟東京地裁に起こしていることが分かった。
十九日、東京地裁(柴田寛之裁判長)であった第一回口頭弁論で、AIU保険側の代理人弁護士は争う姿勢を見せ、「旅行地域が約款の免責事由にある『武力行使の状況下』あるいは『武装反乱の状況下』にあたる」などと主張した。
幸子さんは提訴について、「『戦闘地域』を理由にした支払い拒否を裁判所が認めれば、小泉純一郎首相やアメリカのブッシュ大統領の『戦闘は終結した』との認識が誤りになる。イラクはフリーで取材に行く人たちにとってますます入りにくくなっており、この裁判で問題意識が高まり、応援する形になればと思った」と話している。
幸子さんや関係者の話を総合すると、信介さんはこれまで一年ごとに契約する形で、AIU保険の海外旅行傷害保険に加入しており、昨年九月にも契約した。
幸子さん側は、事件が約款にある「急激かつ偶然な外来の事故」にあたり、死亡保険金の支払い義務が発生したと主張している。幸子さんらが支払いを求めたのに対して、同社は「免責事由に該当する」として拒否した。
橋田さんは五月二十七日(日本時間二十八日)、おいの小川功太郎さん=当時(三三)=ら計四人で車に同乗して移動中に、イラクのマフムーディアで襲撃を受け、銃撃されて死亡した。
AIU保険広報部の話「約款にのっとると保険金を支払う義務はないと認識している」

  • 原告(遺族)は約款中の戦争あたりを「戦闘地域」とし,支払い拒否事由がこれにあたるのは不当と提訴
  • 被告(AIU)は約款中の外国の武力行使あるいは武装反乱(その他これらに類似)あたりを根拠に拒否したとして反論
  • 裁判所(判決)は,被告主張のうち,より特措法との齟齬がなさそうな武装反乱にあたるとして棄却

ってとこかな.
散発的な武装反乱があることは認め,それでもなお「非戦闘地域」と解釈(政治的解釈)するのが政府の主張のはずなので,やはり,この判決は,特措法(非戦闘地域)について判断を下したものではない.
ただし,報道を見る限りでは,AIU保険が遺族側の訴訟意図を嗅ぎ取り,日本政府の主張に配慮している印象,裁判所がその配慮にのっかり政治的な議論を避けた印象も捨てきれない.

*1:ビデオに撮って見たことを後悔しない程度.一方で,ほぼ予想通りの内容ばかりで徹夜して見ていたとすれば後悔したであろう程度.

*2:山本一太氏(自民党参院議員)が民主党マニフェストについて批判する度,「あなたに言っても仕方ないですけど」と枕詞をつけていたが,バカにされてないか?

*3:基礎年金=約7万円/月=に消費税を充てた後,現在の国民年金加入者=自営業者/パート/被扶養者/その他=がそれだけではどう考えても生活がままならない部分

*4:政策論としてパートなど分も使用者負担させる選択肢はある