裁判

殺人事件で遺族に陳述機会 英、裁判に導入検討

【ロンドン2日共同】英憲法問題省のハーマン閣外相は1日、殺人事件の被害者の遺族が、一家の働き手を失った経済的窮状や思いなどを法廷で陳述できる制度導入を検討していると発表した。
英国の裁判ではこれまで、犯罪被害者の遺族は完全に“蚊帳の外”で、発言できるよう遺族らが強く要請していた。政府は、判決にどのような影響を与えるか調査するため、法制化の前に来年4月からイングランドウェールズの5つの裁判所で実験を行う。
ハーマン閣外相によると、遺族が直接陳述しない場合は弁護士や代理人が代読できる。当初は殺人事件に限るが、悪質なドライバーによる交通死亡事故にも適用を検討しているという。

日本でも最近よく話題になる刑事裁判における被害者遺族の陳述.
気持ちは痛いほど分かるし,被害者が存命な事件であれば,被害者は陳述の機会が与えられる可能性が高いので不公平感も理解できる(刑事訴訟法上は,意見や気持ち,感情の陳述ではなく,あくまでも被害立証・補強の為の陳述だと思うが,実際にはその場で気持ち・感情も陳述できるはず).
ただ,詐欺や強姦のように被害者側の主観が事実認定(有罪/無罪)に関わる事件と,殺人や傷害のように客観的(もしくは加害者の主観=故意)によって事実認定が行われる事件ではその効果・意味に違いがあるし,また,被害者(遺族)の心情は本来,事実認定段階ではなく,量刑段階で斟酌されるべきものだと思う(心情的にはともかく法律論的には).
被害者(遺族)がどのような哀しみを訴えようと,過去の時点に於ける加害者の故意の有無・度合いが遡及的に変化するはずもなく,逆に被害者がいかほどの苦痛を受けていなくても,同様に過去の時点の加害者の行動・意思に変化はない.
米国のように陪審が事実認定を担当する陪審*1で,「アマチュア」の陪審員が事実認定において同情や嫌悪と一定の距離感を置けるか,さらに日本で今後導入される参審制(事実認定・量刑の両者に関与する)では,事実認定で被害者感情と一定の距離を置きつつ,一方で量刑段階で考慮するという切り替えが「アマチュア」参審員に可能か,そもそも刑罰・量刑・事実認定の意味・扱いについて,熟慮が必要だと思う.

*1:英国は詳しくないが概ね同じはず