戦犯に関する個人的立場

  • 日本国は,東京裁判の当・不当は別として,サンフランシスコ講和条約でその「判決」を受けて入れている(一部保守層におもねって,ここでは敢えて「裁判」ではなく「判決」としている).
  • 法の欠缺と遡及処罰の禁止の関係については別論が必要かもしれないが,「判決」を受け入れた以上,その「判決」を下した裁判手続や根拠法に瑕疵があろうとも,「判決」に於て「有罪」を宣告された者は,異論なく「有罪(犯罪者)」である.(少なくても,その瑕疵ある手続を適法・適正な手続—例えばサンフランシスコ講和条約の破棄など—によって無効とするまでは)
  • 「戦犯」への恩給支給は,単なる政治的・社会福祉的配慮に過ぎない=その罪責・罪状とは関わりがない.(<罪>の結果である<罰>が赦免されたとしても,赦免された<罰>の根拠たる<罪>が消えたわけではない.国内法における「再審無罪」のように,<罪>が消え,その結果として当然に<罰>も消える(加えて「罰」による損害の補償を受ける)のとは意味合いが異なる.従って「A級戦犯」(の一部)は「罰の赦免」こそされたが,「罪の赦免」も「名誉回復」もされていない)
  • BC級戦犯の内,「冤罪」と思われる者が少なからず含まれることは,全てのBC級戦犯の罪を否定するものではない(個々のBC級戦犯の罪状について個別に議論すること,罰せられなかった/訴えれなかったBC級戦犯相当の者の存在について議論することについては否定しない)
  • 敗戦当時の国家首脳を中心とするA級戦犯の「戦争責任」と開戦当時・開戦前後の国家首脳の「戦争責任」について,改めて総括することも否定しない.例えば,本来の戦争責任者の国内法または国際法*1による罪の追求,または罪の不存在の明確な宣言を前提に「A級戦犯」の「罪の赦免」「名誉回復」をサンフランシスコ講和条約当事国に請求することは否定しない.但し,「戦争責任」を取り合えず脇に置いたまま,東京裁判の不当性のみを強調しての「罪の赦免」要求は,その受忍可能性という現実的な側面からも,倫理・政治的な側面からも否定する.
  • それでもやはり(結局のところ),現状では,日本国の正式な立場としては,「戦犯」は「戦犯」である

(2005年10月20日)

本記述を参照している(靖国参拝に関連する)項目

*1:おそらく「事後法」になるであろうが,結論だけ言えば,「法の欠缺」が著しく,かつその罪責が重大な場合には「遡及処罰」の容認可能性を考えてもよいと,個人的には思う