日本が右翼化してきていると隣国から言われていますが

(近)隣国から<右翼化>してるって言われてるのか?<右傾化>だと思ってた.
議会の勢力図を見れば,いわゆる<革新>勢力が圧倒的に減っているのだから*1<右傾化>はしてるんでしょう.
ただ,日本の場合,共産圏が壊滅的に崩壊していく過程でも,崩壊しきった後でも,<革新>勢力が旧来の思想・思考を捨てきれず,加えて,共産主義と一線を画した<革新>勢力も登場しなかった.その為,<右派><保守>が増えたというよりも,<革新><左派>の受け入れ基盤がなくなったようにも思える.
一方で,五十五年体制下での社会党への支持,,特に消費税導入時のそれにしても,<共産主義>や<革新>への支持というよりは,単に現勢力(自民党)への批判・反発に過ぎず,日本の国民的思想は,首尾一貫して<中道>を中心に微妙に左右に揺れている程度ではないかとも思う.
完全二大政党制のアメリカはともかく,(西)欧州を見れば,欧州型社会民主主義政党に加え,「緑の党」的な一点突破主義政党が<革新(左派)>層を吸い上げているように思える(詳しくないが)*2
というかそもそも,アメリカの民主党は勿論,欧州の<革新>勢力にしても,日本で彼らの政策を展開すれば,<右><保守>勢力とされそうでもある.(ちなみに,イギリス議会で,日本の共産・社民程度の議席を持っているはずのアルスターなんちゃら党は,日本人には<右>と映るのだろうか<左>に見えるのだろうか)
日本での,または東アジアでの「左右」や「保革」の基準(軸)というのは,欧米のそれとは随分と異なっているはず.「左右」がフランス革命後の議場を語源としているように,政治を語る際の「保守」「革新」もおそらくは欧米から輸入してきた言葉.
言語が変われば似たような言葉の意味も変わるのは当然だが,輸入元ではどちらも相対的な言葉のはずなのに,輸入先(日本や東アジア)では絶対的に使われている印象が強い.
もっとはっきり言えば,建設的な議論を避け(逃げ),単にレッテルを貼ることで周囲に反対勢力の悪印象を与える為にしか使われてない気がする.
数世紀前ならともかく,政治の役割と権能がとてつもなく肥大化した現代に,2つや3つの勢力・傾向・言葉でものごとを理解しようなんて単純な思考法は,血液型別性格診断と並んで廃れてほしい感じ.
売国」と「愛国」の方が,笑える分まだマシ.政治の場で本気で使われ始めたらさすがに笑えないけど.

「日本の政治勢力は,<ブルジョア>と<プロレタリアート>,<資本家>と<労働者>ではなく,<自営>と<雇われ>*3に二極化されてきた」
何かの本に書かれていた記憶があるが,この「レッテル」というか「二項化」にはあまり違和感を感じなかった.

  • 本来,「プロレタリアート」「労働者」「革新」「左」のはずの農家や中小企業・自営業が,いわゆる<保守(右)>勢力である自民党を支持している.
  • <保守(右)>とされる自民党の政策の中で,欧米の保守勢力が首をかしげたくなるようなモノは,彼ら(自営)を対象にしたモノ.

そう考えると,日本での「左右」「保革」の語感・印象と欧米におけるそれのギャップや,昨今の政治構造の変化についても,一つの平面上で論理的に捉えることができそうな感じ.
日本で「右」や「左」を使ってる人を見ると,「『天皇主権の共産主義軍国主義国家』*4はどっち?」と聞きたくなる.
そういえば,中韓での「左右」の定義はどうなってんだろう.特に中国.
日本で「死刑賛成」と言ってみたり,結婚適齢を上げろと個人の自由を制約しようとすると<右><保守>と取られそうだけど,中国の結婚適齢は22歳だか23歳だったはずだし*5(理由は人口抑制らしいが,それも含めて<保守>的な政策),死刑も存置・執行されているはず.
「改革開放路線」は,「右」なんだろうか「左」なんだろうか.

*1:民主党については左右・保革の幅が広過ぎて,政党単位では何とも言えない

*2:そもそも,当初から「共産主義」政党が無かったようにも思えるが

*3:何かもちっとそれっぽい単語だった気がする

*4:例えば小説『バトルロワイヤル』の舞台とか.天皇主権ではなさそうだけど,帝国主義共産主義社会主義)が共存してそうなイメージを持ったけど,誤読かな

*5:一方で「成人」は20歳