北朝鮮が誤ってテポドンを発射して竹嶋を粉々にしたら

視点が面白い.ただし,直感的には竹島(独島)の領有権は関係なさそう.正確には,棚上げされそう.

自衛権

国連憲章
第51条【自衛権
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。(後略)

Nothing in the present Charter shall impair the inherent right of individual or collective self-defence if an armed attack occurs against a Member of the United Nations, until the Security Council has taken measures necessary to maintain international peace and security.

自衛権発動の要件は,「領土への攻撃」に限定せず「自国への攻撃」と解せるので・・・

  1. 竹島は日本国の領土であり,竹島への攻撃は日本国への攻撃である
  2. 仮に竹島が韓国領土であるとしても北朝鮮が日本の領土と解した竹島に対して,または竹島領有権を主張する日本に対して攻撃したのであり,攻撃対象は日本国である
  3. 仮に竹島が韓国(北朝鮮)領土であるとしても,北朝鮮の攻撃は日本を標的としており,技術的不備で竹島に落ちたと考えられる

1が本旨,1でないとしても2,2でないとしても3という形で主張すれば,安保理が動くまでの間に自衛権を行使してもお咎めはないはず*1
北朝鮮が韓国(日本)に宣戦布告したうえで竹島攻撃をしていた場合,日韓に軍事(安保)条約がなく,東アジアには地域的取極・機関もないので,当事国は完全に限定されるかもしれない.もっともこの場合にも,上記1つめの主張(竹島を自国の領土とする主張)を基に,宣戦布告無しの攻撃を受けたと捉える余地はあるかな.

集団的自衛権

アメリカは日韓双方と個別に二国間条約を結んでいる.したがって,領有権に関係なく集団的自衛権を行使できる.
但し,米韓の二国間条約では,韓国軍の指揮権が「有事」の際には米軍に移管されるらしい*2ので,米韓条約を使った方がアメリカは動きやすいのかもしれない.
一方で,仮にアメリカが米韓条約に基づいて集団的自衛権を行使したとしても,アメリカの独自判断に法的拘束力は全くないので,領有権問題が解決するわけではないし,日本は上記同様,個別的自衛権を主張・行使できる.

補償の問題.

竹島」が粉々になっているので,いずれかの国が領土(領海)を失っている.仮に竹島が粉々になっただけで終わった(戦争にならなかった)場合でも,北朝鮮に対して失った領土・領海の補償請求権は当然に発生する.
北朝鮮竹島(独島)を日本の領土と認め,日本との補償契約(条約)を締結した場合でも,領有権を主張する韓国の請求権は消滅しない.もちろん,逆の場合も同様.
別問題として,竹島(独島)には韓国の建造物があったはずで,この損失に対する補償は領有権に関係なく請求できると思われる.「日本領土に違法に建てられたモノであり請求権は認められない」という主張は,北朝鮮は(韓国に対して)できるかもしれないが,北朝鮮・韓国間の問題にたいして第三者の立場にある日本はできない.

敵国条項

北朝鮮竹島の領有権を主張してるはず*3なので,日本国の竹島領有権主張(や仮定の話として何らかの実力行使)を「侵略行為の再現」〔53条〕とするのは,文面上は可能かもしれない.あくまでも北朝鮮(や韓国)が「主張」するのは可能というだけで,それが国連・安保理国際司法裁判所などで認められるかは別問題.

結局のところ,竹島(独島)が粉々になったとしても,そうではなくデポドンが日韓両国(の領海)の境界線上に落ちたとしても,事態は変わらない気がする.国際法や国際安全保障の問題よりも,日本国内での自衛権問題や,韓国国内での南北問題が最大の争点になりそう・・・
強いて言うならば,間接的な効果として,安保理が領有権問題に関する見解を出す可能性はある.しかし,領有権問題を棚上げしたままで,日韓両国を「紛争当事国」〔32条〕として「紛争」解決を優先させることも可能であり,実際にはそうする可能性が大きいだろう.

国際法に詳しい方の回答が無かったのが残念.

*1:竹島」を「独島」,「日本」を「韓国」に変えれば,韓国も同様に自衛権を堂々と行使できる.

*2:ちょうど今日のニュースで知った

*3:というか,そもそも,韓国も北朝鮮も相手国を自国領土と主張してるはず