準備完了?

イラク外相、自衛隊の駐留延長を要請・町村外相

【ニューヨーク14日共同】町村信孝外相は14日、ニューヨークの国連本部でイラク移行政府のジバリ外相と会談、ジバリ氏は12月14日が派遣期限となっている南部サマワ陸上自衛隊について「イラクの政治プロセスが達成され、治安の安定が実現するまで」駐留を延長してほしいと町村氏に要請した。
ジバリ氏は8月に駐留延長を求める書簡を町村氏に送っているが、会談で直接要請したのは初めて。町村氏は「政治プロセスの進ちょくや復興の状況、国際社会の動向などを総合的に検討して判断したい」と述べるにとどまった。
ジバリ氏はまた、新憲法草案の賛否を問う10月の国民投票について「可決されると考えている。考え方の違う人はいるが、スンニ派を含め支持が得られると期待している」と可決に自信を示した。
町村氏は、バグダッドで14日に起きた連続テロの犠牲者への弔意を伝達。ジバリ氏は早期訪日の意向を重ねて表明した。 (09:21)

というわけで,先日の総選挙で見事に争点から外された自衛隊イラク派兵の延長,与党の2/3議席獲得という実質(強行)要件に続いて,イラクからの「再三の要請」という名目要件が具備・補強された.*1
当然の反発,それも野党・メディアが団結しての猛反対が予想されるわけですが…

を分けて,本質的な議論を期待したいところ.
とは言え,残念ながら,そして当然に,総選挙(の手法・争点)への批判込みで政局扱いされるんでしょう.

  • 例えば共産・社民のような「護憲」派=海外派兵自体の否定派が,戦闘地域だからという理由で派兵延長に反対したところで,説得力は感じない.*2
  • 民主党のように海外派兵自体を容認する立場であれば,戦闘地域(法律違反)を理由とした反対は構わないが,並行してイラク・テロ対策両特措法,または憲法の改正を一種の対案として(法案という形式には拘らないが)提示してもらわないと理が通らない
  • 一方で,自民党にしても,単に対米追従のみで,しかもそれを明言せず,なし崩しに派兵延長するのであれば,単に批判を強め,野党に批判の糸口を与えるのみ.
  • いずれにしろ,故・橋田信介氏の保険訴訟をもって「裁判所が<戦闘地域>と認定した」などという暴論*3だけは勘弁していただきたい.
  • ある意味それ以前の問題として,憲法草案の賛否を問う10月の国民投票は,我が国の憲法改正並にハードル高そうな臭いが醸し出されてますが…これが通らなければ,派兵延長の大義名分は出来そうです.


てなこと書いてたら,

テロ特措法、再延長へ=特別国会に改正案提出−政府・与党

政府・与党は15日、11月1日で期限が切れるテロ対策特別措置法を再延長する方針を決めた。21日召集の特別国会に同法改正案を提出する。自民党中川秀直国対委員長が、改正案について「基本的に提出の方向だ」と述べた。延長幅は、2年を軸に政府・与党で検討する。

とのことで,別に,名目要件なんざおかまいなしって感じ.まあ,誰も撤退するとは思っていなかっただろうし,いつ改正法の話が表沙汰になろうが,審議時に名目・実質要件が具備されていれば十分なのが実際の所.
ともあれ,郵政民営化法案はもはや右から左へ滞りなく通過しそうなので,特別国会はテロ特措法改正法案で荒れそう.


通常国会には,憲法改正国民投票法案)や公選法改正*4,自公連立契約に挙げられている外国人地方参政権付与法案,人権擁護法案*5と,年金以外にも*6課題が山積みですが,それぞれについて「政局」だけにはしないでください>与野党双方.*7

*1:ちなみに手続的には,いずれも時限立法の2特別措置法のうち,イラク特措法(平成15年8月1日法律第137号)は2007年8月まで有効なので,本年11月で期限が切れるテロ対策特措法(平成13年11月02日法律第113号)の改正が必要.

*2:現状,自衛隊及びその海外派兵自体は合法としてることを前提とした上で,イラクが「戦闘地域」であるかどうか客観的に判断できてますか?別の言い方をすると,(民間でなく)自衛隊が行く必要がある「非戦闘地域」はどのような場所とお考えですか?これまでの論調を見ていると,「民間には危険だが自衛隊なら大丈夫な『非戦闘地域』というモノはそもそもない」と言っているようにしか見えず,両特措法の廃止を訴えるならともかく,両特措法の実質廃止—運用による廃止—を訴えるのみで,両特措法を前提にその要件について語っているとは思えません.弁護士資格を持つ福島・社民党党首向けに言うなら,主位的請求が認められればそれにこしたことはないですが,それが却下されるのが明白な中,主位的請求に拘って予備的請求をしないのでは職務怠慢です

*3:なぜ「暴論」かについては既述

*4:違憲判決を受けての在外投票制度の改正のみで留まるなら,さしたる難題ではないが,総選挙前から言われてきたネットでの選挙運動解禁を併せて議題にするとメンドウなことになりそう.尤も,とりあえず総務省解釈で一部・限定的に「解禁」すれば現状では十分ではないかと,個人的には思うところ.はっきり言って,全面解禁に見合うほど,ネット社会も各政党・各候補者の技術力も成熟していないと思われる.

*5:自民大勝でどうなる…

*6:岡田・現民主党代表(あと1日)が与野党協議撤退を明言したので,野党第一党民主党の対応が不明.

*7:今回の「郵政解散」を含め, 個別・狭量な焦点での総選挙は,(独裁でも民主主義の否定でもないが,)コスト・パフォーマンスが悪いことだけは確か.例えば,テロ対策特措法の改正を「政局」にして,それどころか民意を問え(「解散」)など言い出せば,現野党が今回の解散を否定したことと不均衡.