学生無年金障害者訴訟

学生無年金障害者訴訟、原告側が逆転敗訴・東京高裁

成人学生の国民年金加入が任意だった時代に未加入のまま重い障害を負った新潟県の男性2人が、国に障害基礎年金の不支給処分の取り消しと損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(鬼頭季郎裁判長)は15日、計1400万円の支払いを命じた1審・新潟地裁判決を取り消し、請求を棄却した。同種訴訟は 9地裁に起こされ、1審は東京、新潟、広島の3地裁で憲法違反と国の立法不作為を認めた。高裁判決は2件目で、今年3月の東京高裁判決に続き、障害者側の逆転敗訴となった。
判決理由で鬼頭裁判長は、国が学生を強制加入としていなかった点について「収入を得る能力が違うので、学生と他の国民とを区別したことが著しく不合理とはいえない」などとして、法の下の平等を定めた憲法に違反しないと判断した。そのうえで、任意加入しないと受給できないことについて「国が十分に広報したとは必ずしもいえない」としたが、「制度運用は最低限の合理的水準を満たしていた」と認定した。訴えていたのは新潟市の遁所直樹さんと、新潟県三条市の阿部正剛さん。 (19:01)

ある意味,予想通り(小泉靖国参拝訴訟と同じ構図).
記事にあるように,違憲判決—国家賠償請求も認容—は,東京新潟広島の3つ.
また,記事中にはないが,福岡訴訟では,国が控訴を断念,年金支給が決定している.
結果だけ見れば同様の原告勝訴・国敗訴となった上記4判決で,その後の経過として国が控訴している東京・新潟・広島判決と,控訴を断念した福岡判決との差異は,判決内容.
福岡判決は,

  1. 障害基礎年金の受給要件が「初診日において20歳未満」〔国民年金法30条の4第2項・S60改正後〕であることをふまえ
  2. 原告(統合失調症)の「初診日」を,統合失調症の確定診断日(20歳以上)ではなく,統合失調症に起因する疾病—本件では不眠など—で受診した日(20歳未満)と認定
  3. 不支給処分の取消し(請求が認められた)
  4. (最後にここが重要で)以上で十分なので,立法作為・不作為の違法を理由とする国家賠償請求は(年金支給によって)理由がなくなったので判断しない

とした.つまり,国としては,「金は出す.違憲(判決)はダメ」と非常に分かりやすい理屈.
補足すると,一連の訴訟全体としては,立法作為・立法不作為の違法と国家賠償を一義的目的とするわけではなく,あくまでも学生無年金障害者の救済—年金支給(不支給処分取消し),またはそれに相当する国家賠償—を目的としている.(この点,小泉氏—および今後の日本国首相—の靖国参拝阻止を一義的目標とする小泉靖国参拝訴訟や,その他の「政治的」訴訟—特に「違憲」訴訟—と異なる)
なお,新潟・東京訴訟の両控訴審判決(いずれも東京高裁)は,ウェブ裁判例集には未掲載—尤も内容は(記事を読むまでもなく)容易に想像がつく.