今日の判決

主要じゃない判決

いずれも,「主要判決速報」に未掲載なので,裁判所の主観としては「主要ではない」と思われる判決(皮肉).

小泉靖国訴訟:「違憲判決」

大阪二次訴訟控訴審.「公的参拝」「違憲」「請求権なし」の3点セット.大阪高裁・主要判決速報未掲載
ちなみに,昨日の千葉訴訟控訴審は,「私的参拝」と認定(憲法判断なし).こちらは殆どニュースにならなかった.(おそらくありきたりな判決だから)
さらにちなみに,二ヶ月程前の同じく大阪高裁は,公私および憲法判断せず控訴棄却—1審の棄却判決を支持.(2chなんかだと「また大阪か」と訳の分からないことを書いてる人もいるので,一応注記.)

  • 違憲に括弧をつけて,<「違憲」判決>とするか,
  • 全体を括弧で括って<「違憲判決」>とするか,
  • 違憲」を求めた側が「勝利」したものの,「敗北」した側(小泉首相)が上告(上訴)できない点に目をつけて<ねじれ判決><ねじれ違憲判決>とするか,

どれも価値観が滲み出ていてあまり好みではないが,先日の在外邦人選挙権判決のような括弧無し,問答無用の<違憲判決>とは差異をつけたい感じ.
とはいえ,2chによくある「傍論無効,裁判官の独り言」的な暴論にくみするわけでもない.*1ということで,とりあえず「違憲判決」と全体を括弧でくくっておく.
なお,東京訴訟原告団のページに勝訴判決(九州・山口訴訟)のみ記載されているので,近いうちに本判決も記載されるかもしれない.

強制連行訴訟:国賠棄却判決

東京高裁・主要判決速報未掲載.
上の文脈からは,「連行認定判決」(括弧つき)と言えるかも.当然,請求は棄却.


上記2つのニュースソースはそこら中のブログやブックマークに登録されてているだろうから省略.

「キハン力」

こちらはニュースソースつき.

官房長官「大阪高裁の靖国判決、傍論での違憲判断は遺憾」

細田博之官房長官は30日午後の記者会見で、大阪高裁が小泉純一郎首相の靖国神社参拝に違憲判決を下したことについて、「主たる判決では勝訴」とした上で、「国際的にも大きな問題となっているが、政府としてはこのような判断が判決理由の傍論で言われたのは遺憾」と不満を示した。
判決理由で首相が私的参拝だと明言していないと指摘していることに対しても、「いずれにしても首相ははっきりと私人として参拝したと申している。私人としての首相の参拝は中曽根康弘元首相が公式参拝される前に、55回も首相の私的参拝がある」と反論。「判例としての既判力は主文が持つ。規範力が当然ない中での記述だ」と強調した。
政府としての今後の対応に関しては、「判決理由の中で、憲法に抵触する、という表現が入っているが、このような点は判決そのものではないので、本来争うことができない。この点を不服に上告できない」と状況を説明。〔NQN〕 (17:20)

文書による声明ではなく,口頭の記者会見に基づく記事だとは思うのですが…
判例としての既判力は主文が持つ。規範力が当然ない中での記述…う〜ん,「既判力」と「規範力」…う〜ん
細田氏がどちらの「キハン力」の意で発言したのか,それを日経記者氏が正しく汲み取ったのか,不明点が多いが,細田氏か日経記者氏のどちらの,または双方の(法的)知識が非常に危うい印象(一方に大いなる誤認があった場合の他方についても,やや危うい印象).
さておき,

  • いずれにしても首相ははっきりと私人として参拝したと申している → いつ?当初はぼかしてた気が…*2
  • 中曽根康弘元首相が公式参拝される前に、55回も首相の私的参拝がある → まあ,関係ないでしょう.本訴訟の原告が過去の同様の行為を看過したからといって本訴訟の提起を妨げる法的根拠はないのでは?同様に,細田氏は何も言ってないが「伊勢が見のがされてるから靖国もOKなはず」ってのも筋違い.

主要判決

今度は,立派に「主要判決速報」に掲載されてる判決.

一太郎訴訟

本判決の要点.

  1. 一太郎・花子のヘルプシステムは,松下の特許の範囲内
  2. 一太郎・花子のヘルプシステムは,松下の特許の関節侵害に当たる
  3. が,そもそも松下の特許が,容易想到性により無効なので,販売差止請権がない

3つめだけがあれば十分に結論を導き出せる*3
靖国違憲判決」に対する(2ch的な)批判の論理を借りれば,<一太郎・花子のヘルプシステムが松下の「特許」の範囲内にあるか否か><(特許の範囲内を前提に)間接侵害にあたるか否か>は「傍論」に過ぎず,知財高裁(判事)の「独り言」ってことになる…
知財高裁の判事(及び関係者)の方々,「独り言(5人言?)」お疲れさまです…

その他「判決」

州政府のたばこ会社提訴認める=大型訴訟に発展か−カナダ最高裁

【ニューヨーク29日時事】カナダ連邦最高裁は29日、喫煙による健康被害の医療費負担をめぐり、ブリティッシュコロンビア州政府がたばこ会社を提訴することを認める判決を下した。

  • 提訴することを認める判決を下したとのこと.何が問題になってたんだろ.原告適格か?
  • 日本の訴訟だと「決定」に当たると思うが,「判決」なんだろうか?

*1:そもそも不法行為を原因とする請求で,当該行為が違法か否かの判断を「傍論」と即断することに大いに疑問がある(憲法に関する特例は後述).それでも「傍論」と言いきり得る場合(判決)があり得るとしても,判決文を見ていないので本判決に於ける「違憲」部分が「傍論」にあたるかについてはまだ分からない—不法行為違憲)を認定した上で,それによる損害の発生,または因果関係を否定してるんじゃないのか?—.さらに加えて,「判例」としての規範力・拘束力の有無が問題となる上告審(≒最高裁)判決(の「理由」部分)と下級審(一審・控訴審)判決を同列に語るのか?という素朴なツッコミ所もある.そもそも2chなんかだと「主文じゃない=傍論」などという,論外の書き込みも多いかったりする—主文で「違憲」(や「合憲」)としている判決があるなら是非教えて欲しい….本判決に対する有効な批判・反論は,恵庭事件等を参照して「すべきでない判断」をしたという点に収束されるべきではないかと思うが,「すべきでない」から「傍論」への飛躍が見られる印象が拭えない(そもそも「すべきでない」と「してはいけない」でも異なるし,「すべきでない」にしても確立した判例ではない—大阪高裁の判決と同様の結論を採った福岡地裁の小泉靖国訴訟判決では,「司法消極主義」を取らないこと(取るべきでないとの見解)を判決で明示しており,同様に過去,「不要な憲法判断」を行なった裁判例も少なくない.警察予備隊訴訟に於ける判例の射程を,具体的争訟がある場合の「不要な憲法判断」にまで広げるのも早計だろう.)

*2:個人的には「公的」と断言した上での,合憲主張を—内閣法制局に—期待

*3:原審は3つめの結論を採らず,松下勝訴